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第195話

かつて、弥生と奈々は口頭で協議を結んだ。お互いに求めるものがあったからだ。

しかし、今回の事件を受けて、二人の関係は悪化するだろう。

弥生が奈々を突き飛ばしたかどうかに関わらず、奈々は全ての責任を弥生に押し付けるに違いない。これからは共存することは不可能になりそうだ。

今回の件を経て、弥生は奈々に対する警戒を強める必要があると感じていた。奈々は自分が想像していた以上に、奥深い存在だった。

当初は、彼女がただの上品で弱々しいふりをする女性だと思っていた。誰もが他人の前で良いイメージを見せたいのは当然だから。

だが、弱々しい見せかけの下に、他人を陥れる悪意が潜んでいれば、別の話になっただろう。

そう思った弥生は、由奈に向かってこう言った。「心配しないで。私は自分を守れるわ。だって、彼女が今回私を害そうとしても、結局自分が損しただけでしょ?」

「確かに」由奈は頷いた。「人を害しようとして自分を害するなんて、スカッとするわ」

「うん」

そう話していると、レストランの店員がデザートを弥生に運んできた。由奈は驚き、大きな目を見開いた。「ちょっと、いつの間に私が見てない隙にまたデザートを頼んだの?ちゃんと医者の言うこと聞いてるの?もう食べちゃだめだって!」

「分かってる、あと少しだけ」

「ダメよ、さっき一つ食べたばかりでしょ」

「じゃあ一口だけ」弥生はまだ交渉を続けようとした。

「ダメ!絶対ダメ!何を言ってもダメよ!」

......

昼食の後、二人はショッピングモールに向かい、夜遅くまで買い物を楽しんで帰宅した。

弥生は一日中、スマホの「おやすみモード」をオンにしていたため、帰宅してからそのモードを解除した。すると、理優から仕事に関するメッセージがいくつも届いており、それらを一つずつ確認し、返信した。その後、瑛介からもいくつかのメッセージが来ているのを見つけた。

最初のメッセージは「どこにいるんだ?」

半時間後、彼女が返事をしなかったので、瑛介は電話をかけたようだ。

「電話に出たくないのか?」

三つ目は午後のもので、彼女に連絡が取れないため、瑛介は彼女を急かしていた。

「怒っているのか?奈々のことのせいで?」

「弥生、電話に出てくれ。話があるんだ」

その後、彼女が返信しなかったためか、瑛介はメッセージを送るのをやめたようだった。

弥生
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